何度読んでも泣いてしまう絵本!『くまとやまねこ』
イラストレーターの五島夕夏さんがおすすめの絵本を紹介するYouTubeチャンネル「五島夕夏の絵本チャンネル」。
今回ご紹介するのはこちらの絵本です!
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書き起こし/岩間よいこ
何度読んでも泣いてしまう
今日紹介するのは湯本香樹実さんがぶん、酒井駒子さんがえの『くまとやまねこ』という絵本です。
私はこの絵本を、 本屋さんで立ち読みしたときにまず泣いて、家に帰って読んでまた泣いて、お母さんに勧めて読ませたらお母さんが泣いて、それを見て泣くっていう。
本当に何度読んでも泣いてしまう絵本です。
毎回「来る来る来るここで来る!」って分かりつつ絶対に泣いてしまう、ある種泣きたいときに読むというお薬のような絵本です。
親友を亡くしてしまったくまの心の再生
『くまとやまねこ』というタイトルではあるんですが、まず最初に登場するのは、表紙にも描かれているくまとこの肩に乗っている小さなことりなんですね。
こんなグレイッシュなテクスチャのある紙の上に、黒いパステルとか木炭で描いたたようなモノクロのイラストがずっと続いていきます。
1ページ目でまず主人公のくまが泣いています。
仲よしのことりが死んでしまいましたというところから始まるんです。
さすがにまだここでは泣かなかったんですけど!
くまは大親友のことりが亡くなったことをとても悲しんで、自分で小さな小箱を作ってその中にお花とことりを詰めてシクシク泣いているんですね。
くまは悲しくて悲しくて仕方がないから、その小箱をいつも持ち歩くわけですよ。
それで外に持ち歩いているとまわりの友達たちにその小箱なにって言われるので、中に入っている亡くなったことりを見せたりするんですね。
そうすると周りの動物たちはそれを見て困ってしまう。
気味悪がることはないんですけど……死んでしまってるんだから持ち歩いたって仕方がないんだよとまわりの友達は励ますんです。
でもくまにとっては大事なことりなので聞く耳を持たないんですね。
くまは徐々に引きこもるようになってしまいます。
そんな中、ある日やっと天気がいい日に外に出たときに一匹のやまねこと出会います。
そのやまねことのおしゃべりや、音楽家のやまねこの演奏を聴くことを通して、くまの心境が徐々にに変わっていくというのがこの絵本の主軸になっています。
モノクロの絵本の特徴
全体的にモノクロで色味が全くなく、文章も割と長いので、下手すると飽きてしまうんじゃないかって一瞬思われるかもしれません。
でも私は本屋さんで立ちながらでもバーっと読み進めてしまうくらい引き込まれるものがありました。
モノクロの絵本というのはこの一冊だけではないと思うんですけど、何よりの特徴は、読む人に色を想像させるという点です。
ことりを亡くして悲しいというくまの気持ちもモノクロですごく表現できるし、ことりと一緒に木箱に詰めた花は何色なんだろうって読む人に自然と思わせることができる。
そんなところがモノクロであるがゆえのメリットだと(泣いているときではなく)冷静になったときに思いました。
絶対に泣いてしまうシーン
先ほど紹介したように、やまねこに出会ってくまの心境はちょっとずつ変わっていきます。
というのも、やまねこはことりを亡くしてしまったくまに対して唯一、ほかの友達とは違う反応をしてくれるんです。
本当に大事だったんだねというふうに言ってくれるんですね。
そしてやまねこはくまとことりのためにバイオリンで一曲演奏してくれます。
そのシーンは言葉がなく、もちろん絵本だから音楽は流れないんですけど、それも頭の中でモノクロの色を補完するのと一緒で、弾いているやまねこの姿を見てどんな音楽なんだろうってこっちが勝手に想像してしまうんですね。
そんなところもこの絵本の素晴らしい特徴だと思います。
くまはじっと座ってその音楽を聴きながら、ことりとの生活を回想するんですけど、私はもうこのへんで泣けてきてしまいました!
ことりは亡くなった存在としてここまでずっと続いてたのに、くまの回想によって生きていた頃の生き生きとした姿が出てくるんですよ!
そこでもう悲しくなってしまうというか、あまりにも愛くるしくて、生きることを一生懸命楽しんでいることりの姿を見ると絶対にこれは泣いてしまうと!
子どもの方が死だったり生きているときの回想だったりをちゃんと受け入れられるのかもしれないんですけど、大人になった今は完全にぐっとくるものがある。
それは小さな動物だからとかくまがかわいそうだからとかじゃなく、理屈ではない生きているものの愛くるしさと死んでしまうことの儚さを圧倒的に感じてしまうんですよ。
ことりだからという次元ではなく、尊いものと儚いもののギャップに気持ちがぐっと持っていかれてしまう。
それがこの絵本のねらいでもあるのかもしれないけど、私はそれを強く感じました。
差し色の効果
ここまでずっとモノクロで続いていたのに、ことりが出てくる回想シーンで差し色みたいにピンクがちらっと入ってきます。
それがデザイン的にはすごくおしゃれとも取れるし、生きていた頃の生き生きとした感じとか、くまの回想の中で思い出された色味とかっていうのを感じさせてくれるんですね。
だからここまでモノクロが続いてきたことの意味がここでいきなりすごく生きてくる。
この差し色のピンクが、もしかしたらたくさんの色があるカラフルなものよりもカラフルに見えるという錯覚を起こさせます。
またこの一色が入ることによって、生きてるものの美しさをより感じさせてくれる。
……っていうのを泣いているときは感じないけど、読み終わったときに再度思い返すとあるなって思います!
でもこうやって解説しようと思うとこういうお話になるんですけど、やっぱり涙を流すときって理屈じゃない部分が絶対にある。
私は何度読んでも泣くってことは、きっと何度読んでもわからない泣いてしまう理由があるんだと思います。
それは泣かなくなったときにやっと理解できるじゃないでしょうか。
心にぐっとくるものは絵本にも存在する
私の母はもう割と……年齢を言うときっと怒られるんですけど(笑)、50代そこそこぐらいの母親がこれを読んで、私と同じタイミングで同じように泣くんですね。
本日無事搬入を終えました。
— 五島夕夏 (@goto_yuuka) 2017年3月23日
家族の暮らしをサブテーマにした、ねこだらけの展示です。https://t.co/SNmOfbWdJk
明日から4月2日まで、ぜひ見に会いにきてくださいね〜! pic.twitter.com/yx6CSGocU1
母は陶芸家の五島美菜子。2017年3月24日~4月2日東京目黒のMaruse B1 galleryにて親子展を開催。
それはもしかしたら親子だからかもしれないし、同じ女性だからかもしれないし、同じように動物が好きだからかもしれないし、理由はたくさんあるかもしれません。
そういう年齢関係なく何かぐっときててしまうものがあるということには、自分たちにはわからない何か理屈があるんだと思います。
そうしたものはもしかしたら普通の小説や映画などでも感じることができると皆さん思っていると思います。
でも実は絵本でも同じような体験ができるってことを知ってほしいと、この絵本を読んだときに強く思いました。
子ども向けとか幼児に読み聞かせてあげるものとかっていうイメージだけじゃなくて、数分の中でいきなり心をつかまれる時間が絵本にもきちんと存在するっていうのを、絵本を読まない人には特に知ってほしいです!
お子さんと感想を共有してみて
結構文章も長くて割と文学作品みたいな感じでもあるんですけど、もちろん絶対に子どもでも理解できるし、それが絵本のいいところでもあります。
ぜひお子さんがいる方はまず自分が読んでみて、どこがどういうふうに感じたかって感想を持った上でお子さんに読ませてあげてください。
その感想を共有しあったり、何が悲しかったとか何が美しかったとかっていう話をしてみたりするいい機会になるかと思います!
「また泣きたい気分になったらきっと読んじゃうと思います」
ということで今回紹介したのは、湯本香樹実さんがぶん、酒井駒子さんがえの『くまとやまねこ』という絵本でした。
ぜひ皆さんも読んでみてください!
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夜明けとともに読みたいシンプルで美しい絵本『よあけ』前編 - YouTube
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五島夕夏初の絵本『よんでみよう』発売中!
圧倒的にシンプルで圧倒的に美しい! 夜明けとともに読みたい絵本『よあけ』
イラストレーターの五島夕夏さんがおすすめの絵本を紹介するYouTubeチャンネル「五島夕夏の絵本チャンネル」。
今回ご紹介するのはこちらの絵本です!
ユリー・シュルヴィッツ『よあけ』。
絵の美しさやおすすめの読み方について語っていました。
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静かな絵本
今日紹介するのはこちらの『よあけ』という絵本です。
ユリー・シュルヴィッツさん作・画で、日本人の瀬田 貞二さんが訳をしています。
この絵本、ひとことで言うならば、「圧倒的にシンプルで圧倒的に美しい絵本」。
そんなふうに私は思いました。
簡単にストーリーを説明します。
ストーリーと言っても、文字数はかなり少なくて、静かにゆっくりと進んでいく内容になっています。
音のない暗い暗い夜のシーンから始まって、その静まり返った夜の湖のほとりでおじいさんと孫が2人で寝ています。
そこでは月が木や湖や山、おじいさんたち2人をパーっと照らしていて、本当に静かな夜の世界が数ページ続きます。
その後に、少しずつ少しずつ月が沈んでいって、だんだん周りが明るくなりだした頃に2人が起きだして、何やら準備をして湖にボートで漕ぎ出すんですね。
その時にパーっと昇ってきた太陽と、見えた景色が前面に描かれてるっていうのが、この絵本のメインのページともいえます。
とにかく言葉はもちろんなんですけど、絵で魅せるすごく静かな絵本です。
主人公は一応おじいさんと孫という2人がいるんですけど、それはあくまでもストーリーを進める中での登場人物でしかない。
周りの自然とか、当たり前の一日の始まりとか、人間に特化したものではない大きな枠で捉えている印象です。
光の美しさ
最初に読んだとき、絵を描く身としても、ただ絵本を読む身としてもすごく感動したのが、光の使い方。
まず冒頭で、白い余白をたっぷり残した小さな円の中に静かな夜が描かれていて、
それが次のページでぼうっと月に照らされるんですけど、この時点でもう光がとってもきれい。
月っていうのは、写真で撮っても目で見てもすごく美しいものだと思います。
それに対して、絵の具で白いキャンバスに描くことによってしか表現できない月、絵じゃなきゃ出せない光の美しさを、このページを開いたときにすごく感じました。
紙の絵本を開いたときの感動
最初は青みがかった、グレイッシュで白と青と月あかりの光だけで表現されたページが続いていきます。
そこから徐々に日が昇っていく淡い時間が描かれてくんですが、そこでちょっとずつ緑とか火の炎の赤みとかが出てくる。
そして最後に、びっくりするほど鮮やかな色がバーっと出てくるんですね。
これはもうカメラを通したりネットで見たりしても伝わらない、絵本のページ開いたときにしか、その本人にしか分からない強い感動があると思います。
どの絵本も、デジタルで見るのはすごく便利だとは思います。
でも紙で開いたときの感動というのはどの絵本にも絶対にあって、この絵本はとにかくそのときのインパクトが強いと、最初見たときにすごく感じました。
最後のページは本当に私ははーっとため息が出るほど感動したんですけど、これもフィルターを通すとまたちょっと違う見え方になってしまうと思うので、ぜひ紙で開いて見てほしいと強く思います。
ただ一気に読むわけじゃない
絵本って、簡単に例えば2、3分あれば読めてしまうっていうのもすごくいいところではあります。
この絵本に関してはバーっと読もうと思えば本当に1分かからずに読めてしまうんですけど、
落ち着いて椅子に座って、温かい飲み物を入れて、本当に自分も夜明けを待つような気持ちでちょっとずつ読み進めてもらいたいです。
この絵本、普通の絵本とちょっと違って変わっている部分があります。
全面にイラストがあるわけではなくて、ぼやーっと縁が描かれていて、それが大きくなったり小さくなったりしながら、真っ白の部分が埋められていないページが続いていくんです。
よく見るとその縁にちょっとにじんだテクスチャーや、ちょっとのぞいた淡いピンク色など細かな表現があるのが分かります。
何回も読めば読むほど発見があって、シンプルなものだからといって一度で満足とは思わせない魅力が詰まっています。
私がこの絵本をどこかで読んでいいよって渡されたとしたら、自分が夜明けを迎えたい場所に持って行って、夜明けと一緒にページをめくって読みたくなるくらい、
絵じゃなきゃ表現できない美しさと、目で見る現実世界の美しさを見くらべてみたいと思わされます。
そんなところが面白い部分であり、ただ絵本をペラペラめくって読むという体験の域を超えてるんだなと思います。
紙の絵本であるからこその魅力
もちろん登場人物の動きとかも魅力的でじんわり温かい気持ちになる部分はあるんですけど、やっぱり人間のそうした特徴を忘れてしまうぐらい圧倒的な自然の強さを感じます。
そんな壮大さを、この特別大きすぎるわけじゃない紙の中で感じさせてくれるっていうのは絵本の魅力ですよね。
3Dじゃないのに紙から飛び出してくるように感じられるっていうのは、本当にあえて紙であるからこその特徴だと思います。
今は立体的なものやすごく高画質な物に囲まれて私自身も生活してるし、それが当たり前の世の中になっています。
でも紙の上に色をのせるだけでも人は立体的なものを想像するし、その場所に行ったような気持ちになれる。それを強く証明してくれる絵本だと思います。
私自身はこの絵本を最近知ったんですけど、日本での発行が1977年なので割りと古い作品といえます。
古さを感じさせないことはもちろんなんですけど、描かれた時代と、ものが発達して電子機器がたくさんあるような世界になった今の時代とで変わらない感動を与えてくれる。
そうした普遍的な魅力が存在するのが絵本の良さだなって強く実感しました。
もちろん子どもでも理解することができるし感動もする絵本だと思うんですけど、やっぱり大人が静かに静かに夜明けと一緒に読んでほしいような一冊です!
- 作者: ユリー・シュルヴィッツ,瀬田貞二
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1977/06/25
- メディア: 大型本
- 購入: 4人 クリック: 20回
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五島夕夏初の絵本『よんでみよう』発売中!
イラストレーター五島夕夏初の絵本2/22(水)発売! 岩崎書店『よんでみよう』
YouTubeチャンネル「五島夕夏の絵本チャンネル」では、イラストレーターの五島夕夏さんがおすすめの絵本を紹介しています。
そんな五島さんですが、ついに自身作の絵本が2017年2月22日(水)に岩崎書店から発売になります!
タイトルは『よんでみよう』。
お母さんといっしょにどうぶつたちに呼びかけるという、赤ちゃんへの読み聞かせにぴったりの一冊です。
今回の動画では、絵本の制作に至った経緯や、作品のみどころ、発売にあたっての想いを語ってもらいました。
いつか絵本を描くのが夢だった
──なぜ絵本を描かれることになったんですか?
私自身ずっとイラストレーターをしながらも、いつかは絵本を出版したいという思いがあったんです。
そんな中、たまたま岩崎書店さんにお声掛けいただいて、すごくいい編集さんとめぐり会い、たくさんお話し合いを重ねた末に、一冊作れることになりました。
いつかは絵本を描いてみたいというのが将来の夢でもあったので、そのお話がきたときはもう喜んで引き受けます! とお返事させていただきました。
手に取ったときの紙の質感や、ページを広げたときの喜びを感じて
──絵本の内容を簡単に紹介していただけますか。
こんな感じで、うしろ姿のどうぶつが出てきます。
大人ならきっとうしろ姿のどうぶつだと分かると思うんですけど、実は赤ちゃんや小さい子どもには、何かも分からない存在がそこにいるというふうに見えると思うんですね。
そこに「おーい」と呼びかけながら、そのどうぶつがちょっとずつ振り向いてくれるのを楽しむ、赤ちゃん向けの絵本です。
なのでストーリーが進んでいくような内容ではなくて、単純な形式の繰り返しになっています。
5匹のどうぶつが登場するので、お母さんはまずは正解は言わずに、子どもたちに当ててもらいながら読み進めていってみるのがおすすめです。
──どんな人に読んでもらいたいですか?
私はいつもこのチャンネルで絵本を紹介する中で、絵本というのは大人の方にも勧められるということを強く何度もお伝えしてきたんですけど、
こと私が描いたこの絵本に関しては、やっぱり小さい子どもにとにかく読んでもらいたいです!
今はiPadでも絵本が読めたりとか、スマートフォンでも子どもが喜ぶようなゲームがたくさん出てたりとかしているとは思います。
そんな中でも、やっぱりわざわざ紙の絵本をお子さんに与えようと思ってくれる親御さんがたくさんいたら嬉しいっていうのが、私が日頃から強く思っていることです。
ふわっとした手ざわりや光のやわらかな反射が感じられるという、「ハーフエア(コットン)」という紙を使用している。
普通の絵本とは違う紙を使ってたりもするので、手に取ったときの質感や、ページを広げたときの喜びを、まずは買い手である親御さんに感じてもらって、それを子どもに伝えたいって思ってくる人がたくさん出てくることを祈ってます。
軽い気持ちで手にとって、ただただ単純な楽しみ方を
──この絵本にこめた想いを伝えてもらえますか。
私自身絵本が大好きなんですけど、絵本って、一冊一冊がなにか裏をかいた意味とか、実は隠されていた大人に向けたメッセージとかっていうのを、あえて持っていなくてもいいとも思ってるんですね。
見たままのそのものとか、ページを開いたときの一番最初の感想とか、そういうものをとにかく大事にしてほしい。
だからこの絵本も、もしかしてこういうエピソードがあったんじゃないかとか、子どもに伝えたいこういう強い想いが眠ってるんじゃないかっていうふうには思わずに、軽い気持ちで手にとってみてください。
ただただ「赤い色だね」「これはうさぎだね」とかっていう、単純な気持ちで読んでもらって全然構わないと思っています。
その中で、もしかしたらこうなんじゃないかって憶測をそれぞれの人が持ってくれたら、それだけでも十分私は嬉しいです!
ぜひぜひ本屋さんで見かけた際には手にとって、もし気に入ったらぜひぜひ購入して、私に感想も教えてください!
よろしくお願いいたします〜!
「ぜひ一度手にとってもらいたい自信のある一冊です!」
このインタビューの様子はこちらの動画でご覧いただけます!
【ご報告】五島夕夏初の絵本2/22(水)発売!『よんでみよう』 - YouTube
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『もんだい』刊行記念! 井筒啓之×岩崎夏海トークショー
イラストレーターの五島夕夏さんがおすすめの絵本を紹介するYouTubeチャンネル「五島夕夏の絵本チャンネル」。
今回は、先日行われたと『もんだい』刊行記念トークショーについて五島さんが語ります!
トークショーの様子はこちら
井筒啓之×岩崎夏海 絵本『もんだい』刊行記念トークショー前編(1/3) - YouTube
井筒啓之×岩崎夏海 絵本『もんだい』刊行記念トークショー中編(2/3) - YouTube
井筒啓之×岩崎夏海 絵本『もんだい』刊行記念トークショー後編(3/3) Coming Soon
イラストレーター界の重鎮とベストセラー作家の最強タッグ
今回は、 井筒啓之さんの『もんだい』の刊行記念トークショーを見た感想をお伝えします。
以前このチャンネルで『もんだい』を紹介した際には、色の美しさや、表情の捉え方などについてお話ししました。
それらの最初に読んだときの感想が、作者の方や編集の方の話を聞いてみてどう変化したかをお伝えできればと思います。
トークショーは作者の井筒啓之さんと、編集を担当した岩崎夏海さんとの対談形式で行われました。
岩崎夏海さんは『もしドラ』などの作者としても知られるとても有名な方です。
一方井筒啓之さんも、TIS(東京イラストレーターズ・ソサエティ)の会長を務めるなどイラストレーター界の重鎮。
とてもすごい編集さんと、とてもすごいイラストレーターの方のタッグという、びっくりするような組み合わせです!
絵本の依頼が来るとは思わなかった
お二人の話が進んでいく中でとても面白いと思ったのが、岩崎さんは井筒さんに対して「こんなに知名度の高い方が絵本を書いてくれるなんて」という気持ちがあって、井筒さん自身は「僕の絵は決して絵本には向いていないと思っていたので、絵本の依頼が来るとは思わなかった」とおっしゃっていた部分です。
『もんだい』刊行記念トークショーレビュー前編 - YouTube
たくさんお仕事をされているとても有名であるお二人がそんな風に思うなんて、まだ駆け出しの私にとっては驚きです。
私みたいに若い人だけがそうやって何かに驚いたり、仕事に対する不安を持ったりするのだと思っていたのですが、お仕事ができる人だからこその驚きがあることに驚きました。
「気」をとらえた肖像
岩崎さんは、この絵本以前にも井筒さんが描かれていた、文豪シリーズなどの有名人のイラストをご覧になっていたそうで、それらの作品に対し「人間の気をとらえている」とおっしゃっていました。
デザインウィークの写楽インスパイアに出品した作品。20年ぐらいかけて描きためた作家の肖像(文庫本の表紙に描いてある)をB1ポスターにした。50人を2枚に分けてレイアウトしてある。 pic.twitter.com/oy4B2eOwkr
— Hiroyuki izutsu 井筒啓之 (@izu2) 2016年11月21日
ただ表面的に似ているとかではなく内面から出る気もとらえているというのはイラストレーターにとってものすごく素晴らしい褒め言葉だと思います。
確かに私から見ても、井筒さんの描く線はとても迷いがないのですが、それがちょっとでもズレていたら意味がないというような線でもあります。
すごく気持ちよく描かれているという印象です。
井筒さん自身が「絵本には向いていないと思っていた」とおっしゃっていたのも分かるくらい、大人が見てグッとくるものがあるタッチだと思っていたので、それを岩崎さんが絵本にしようと思う発想がすごいですよね。
そしてそこに合わせて、しかし自身のスタンスは変えずに歩み寄る井筒さん。
どっちもすごい人が、お互いの譲れないところはしっかりと柱があって、譲れるところはとことん譲り合って近づいて作り上げていく過程が、このトークショーですごく伝わってきました!
いやーすごいな! とにかくすごいなっていう感想が前面に出たお話でした。
両者が持つ揺るぎない柱
この『もんだい』という絵本、すごく言葉の量が少ないんです。
見開きでひとことだけ問いがあるページが進んでいくだけなので、とってもシンプル。
井筒さんは最初、こんなに言葉の少ない絵本があるのかと驚いたそうです。
でも岩崎さんには、余分なものをそぐことで本質的に見えてくる、井筒さんの美しい線とタッチと言葉という、その3点だけでも十分成り立つという自信があったと語っていました。
岩崎さんを納得させてしまう井筒さんのタッチももちろんすごいし、これしかいらないと言い切れる岩崎さんもすごいと思いました。
ただやっぱりそこにたどり着くまでには、何かを足したりそぎすぎたりと、一直線に進んできたでわけではないというお話もされていました。
例えば、井筒さんがラフの段階で描いた落書きが面白かったので、岩崎さんはそれを入れたいとずっとおっしゃっていたけども、最終的には結局それもない方がいいんじゃないかという結論に至ったそうで。
岩崎さんは自分で頼んだにもかかわらず、やっぱりなくして欲しいと井筒さんにお願いしたという話をされていました。
それって信頼関係が成り立っているからこそできることですよね。
どちらかが言いなりだったり、どちらかが頼り切っていたりしていたら、片方のイメージや絵本に対する思いだけがのった一冊になってしまっていたかもしれない。
井筒さんの持つイラストで譲れない部分や、今まで積み上げてきた経験に基づいた絵本に対する思いと、岩崎さんの持つ絵本の新しいイメージや岩崎書店から出すことの意味。
それらの揺るぎない二本の太い柱が立っているのが、お話を聞いて分かりました。
絵で行間を補完する
イラストレーターをしている私が個人的に面白いと思ったのは、文学というものの話になったとき。
岩崎さんによれば「文学というのは、書けば書くほど書ききれないものが出てくる。書けるものと書けるものの行間に、本当は書きたいけど書けないものが生まれてくる」といいます。
これまで数々の挿し絵を描いてきた井筒さんはその話を聞いて、「挿し絵を描くときには、行間を読んでそれを補完するような絵を描くこともある」とおっしゃっていたんです。
『もんだい』刊行記念トークショーレビュー後編 - YouTube
お互いの隙間を埋め合うかのように、絵でできることと言葉でできることのバランスがすごくいいお二人だと思いました。
それが今回絵本という形で、作家さんと編集さんとして組み合わさったときに出来た一冊が『もんだい』だと思うと、さらに感慨深く読むことができます。
私はイラストレーターとして挿し絵を描くときに、そういった行間を読むことや、言葉で書き表わせないものを自分だったらどう描くだろうと補完するようなことを、まだそこまで実感を持って行ったことがなかったので、とても勉強になりました。
きっとそれは文学のこともある程度理解していなきゃいけないし、挿し絵を描いてほしいと頼む著者の方も、ある程度絵のことを理解していなきゃいけない。
持ちつ持たれつであり、相手に頼り切らず自分の柱をきちんと持つことがいかに大事かということも、このお話を通して感じました。
それは絵本に関してだけでなく、どんなことにも言えること。
今回、トークショーの話題は絵本に関することでしたが、絵本以外にもあてはまることをたくさん感じました。
絵本にもっと関わってみる
前回、『ぼくのにゃんた』を紹介したときに、作者の方のお話を聞くとまた絵本の見方が変わってくるという話をしたのですが、それは今回のことにもすごく言えるなと思って。
一度何も考えずに一冊読んでみて、その後に、実は作者ってどんな方なんだろうと調べてみたり、編集さんの名前を調べて、同じ人が編集した絵本を見つけてみたり。
自分が感じたものがある一冊に、もうちょっと深く関わろうとする時間っていうのは、すごく心を健やかにするような気がします。
私も同じイラストレーターとしてもっとがんばりたいと思ったとともに、すごく素敵な一冊だと、お話しを聞いてさらに思いました。
みなさんもぜひ、井筒啓之さん作で岩崎夏海さん編集の『もんだい』を、手にとって読んでみてください!
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『もんだい』刊行記念トークショーレビュー前編 - YouTube
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クスッと笑えるゆるーい変身! 鈴木康広『ぼくのにゃんた』
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今回五島さんが紹介するのはこちらの絵本です!
作者さんのトークショーイベントでゲットした絵本
私が本日紹介する本はこちら! 鈴木康広さん作の『ぼくのにゃんた』という絵本です。
この『ぼくのにゃんた』は、鈴木康広さんが出す初の絵本。
それを記念して、先日青山ブックセンターで鈴木康広さんと以前紹介した『このあとどうしちゃおう』の作者のヨシタケシンスケさんとのトークショーがあったんです。
それを観に行った時にこの絵本を購入しました!
トークショーでもらったというサインを嬉しそうに見せる五島さん。「家の猫を描いてもらいました」
実はこの鈴木さん、数年前からTwitterでにゃんたのちょっとしたシリーズみたいなものをちょっとずつアップしていそうなんですね。
ニャイス #猫描き pic.twitter.com/zXY7lYSqrw
— 鈴木康広 Yasuhiro Suzuki (@mabataku) 2013年11月23日
ニャンプー ハッと #猫描き 訂正(ヒゲを忘れていました) pic.twitter.com/cYUUc2vNb6
— 鈴木康広 Yasuhiro Suzuki (@mabataku) 2013年8月25日
インターネッコ #猫描き pic.twitter.com/qOQZxdJg6W
— 鈴木康広 Yasuhiro Suzuki (@mabataku) 2013年8月29日
それらと、新たに描き下したものをまとめたのがこの『ぼくのにゃんた』という一冊になっているそうです。
トークショーでは昔初めて描いたにゃんたが披露されたり、徐々に描き慣れてくる様子も感じられたりして、すごくおもしろかったのを覚えてます。
猫の変化シリーズ
「ねこの にゃんたは ぼくのねこ ちょっと かわった ねこなんだよね」という冒頭からはじまります。
にゃんたはそんな「ちょっと変わった猫」という紹介のとおり、「にゃべ」になったり「まにゃいた」になったり、「バニャニャ」になったり「キャッツカレー」になったり(おそらく「カツカレー」とかけてる!)するんです。
要するに親父ギャグというか(笑)ダジャレみたいに「ねこ」とか「キャット」とかの言葉にかけた猫の変化シリーズがずっと続くんですね。
みなさんも小さいころの記憶を思い出してほしいんですけど、こんなふうになにかが変身したり擬人化したり、動物がなにか違うものに変化したりっていうのがすごく好きだった時期がないですか!?
私が小学生ぐらいのときにこの絵本に出会ってたらすごく「わー! 買って買って!!」ってねだってただろうなって思います。
大人が見てもクスッと笑える
この「にゃん粉」っていう粉を使うと絶対猫の形のおやつができちゃうらしいんですね。
「ニャッフル」とか「ドーニャツ」とか「ビスキャット」とか……。
それって子どもが見たらかわいい、おもしろいって言って笑うと思うんですけど、大人からしたら「いやもうちょっと無理がないですか!」みたいな(笑)
それもおもしろさの一つかと。
大人からしたらちょっと恥ずかしくて、それ猫とかけられてる? みたいになるところも鈴木さんはもうこの素朴な線とイラストタッチで描き切っちゃうんですよね。
それが大人にとっては癒しでシュールで面白くて、子どもにとってはただただかわいくて、変身したという喜びを感じることができる。
そんな大人と子どものどちらにもウケるんだけど、ウケるポイントが違うというところも、この絵本の見どころかと思います。
すてきな発想力
私が一番お気に入りのシーンを紹介します。
この、猫がシャワーになっている「ニャワー」。
もうこの図だけで結構ヤバイなあと思って(笑)
鈴木さんはなんでここに猫をかけようと思ったんだろう……私には浮かばない!
この猫の顔のどこから水が出てるんだろうとか、毛穴から出てるのか? 毛はびしょびしょにならないのか? とかすっごい気になる。
これがもしリアルタッチの猫だったら結構えげつないことになってる気がするんですけど、この絵だから成立しちゃう。
これを絵本の一ページにしようと思う発想は私にはマネできないです!
シンプルなデザインが実はおしゃれ
通常であれば髪の毛も色をつけたり、表情にほっぺたのピンクがあったりしてもいいはずなんですが、にゃんたの肌色と淡いブルーだけでほぼ構成されているんです。
それがまた一周回っておしゃれに感じます。
表紙もすごく素朴でシンプルで、言ってしまえば抜け感ありまくり。
でも実はこれってデスクや本棚に飾ってあったら、デザイン的にとてもおしゃれなんじゃないかと思わせる魅力があるんですよね。
描いていることは親父ギャグだったり子供が笑い転げる内容だったりするんですけど、意外とこの線と色と、中の構成ですごく「今っぽい」絵本になっているいうのもとても印象的でした。
気持ちいいモヤモヤが続く絵本
いろいろとにゃんたが変化しておもしろいシーンが続いた後、ある日主人公の「ぼく」のもとからにゃんたがいなくなってしまうシーンがあるんです。
そのときの悲しいシーンは結構大胆に真っ白な背景を残したまま描いているんですね。
今まで楽しい雰囲気で続いてきたところからいきなりこのシーンに来るので、子どもはきっとはっとするんじゃないかと思います。
それも鈴木さんの天然なのか計算なのかわからないのも、またすごいにくい部分だなぁと感じました。
計算だったら、大人なら「きっとここで泣かせるんでしょ」って思ったり、子どもでも気づく部分があったりするかもしれない。
でもそういうのがなく突然こういう「えっ何この寂しいページ」ってなるページがどんって挟まってたりするので、ちょっとクエスチョンマークが続く絵本なんですよね。
一ページずつ解釈しながら進んでいく絵本ではなくて、毎ページ毎ページではてながずっと浮かび続ける。
それが最後のページまで続いて、なんとなくモヤモヤしてるんですけど、その気持ちいいモヤモヤがページを閉じても続くっていうのがこの絵本ならではの魅力だと思います。
そういうページを閉じてもなんとなくおしまいにしないでほしいと思わせる絵本ってなかなかない気がします。
おそらくそれを鈴木さんが狙ってなく叶えているというのが、この絵本をたまに見返したくなる理由かなと思います。
絵本刊行イベントへの参加をおすすめする理由
私はいつも絵本を紹介させてもらっていて、購入してみてほしいとか読んでみてほしいとお伝えしているんですが、私が今回おじゃましたトークショーみたいなものに行ってみるのもおすすめです。
実は意外と絵本って、出版するときにそういったイベントが本屋さんなどいろいろなところで行われていたりします。
そういう場で一度作者の方の話を聞いてから絵本を購入してみると、作品への興味や解釈がガラッと変わりますよ!
作品を通して作者の方と接するだけではなく、ダイレクトに作者の方の話を聞いてみる機会を持つというのも、絵本との新しい向き合い方なのかなと思います。
『ぼくのにゃんた』のトークショーにもお子様連れの方がいたのですが、大人向けの難しい話をしている中でも、子どもたちはすごく真剣に聞いている印象がありました。
意外と子ども大人関係なく、作者の方の話は面白く感じられる性質を持っていると感じたので、絵本好きの人以外にも勧められる場かもしれません。
ぜひそういうイベントがあったらみなさんも参加してみてはいかがでしょうか!
ということで本日私が紹介したのは鈴木康博さん作の『ぼくのにゃんた』という絵本でした。
よろしかったらみなさんも読んでみてください!
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あなたは答えられる!? 井筒啓之『もんだい』
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今回五島さんが紹介するのはこちらの絵本です!
井筒啓之さんは大御所イラストレーター
今回紹介するのは、井筒啓之さん作の『もんだい』という絵本です!
作者の井筒啓之さんは普段イラストレーターとして活躍されている方です。私もまだ駆け出しのイラストレーターではあるんですけど、井筒さんはかなりの大御所!
私が学生時代から本の装丁やポスターでよく見かけている方だったので、今回絵本を出版されたという話を聞いてすごくびっくりしました。
ベストセラー本の装丁を多数手がけている井筒さん
魅力的な表情やポップな色合いが特徴の人物画を描かれているイメージが強いです。
絵本の概念がくつがえされる
こちらの絵本、フォントが目立つ表紙から、すごく引き込まれるものがあります。
もうこの表紙の時点で、一個の文学作品みたいな雰囲気が伝わってきていて、絵本っぽくないですよね。いわゆるキャラクターや登場人物がいてタイトルがあるっていう絵本の表紙の常識とはちょっと違います。
中身のほうも、私が抱いている絵本の概念がかなりくつがえされるような内容になっていて、15人の著名な歴史的人物から、ひとつひとつ問いが投げかけられるような流れになってるんです。
「帯の文句が印象的」と五島さん。「世界を変えた15の「もんだい」あなたはこれに答えられますか?」
一枚一枚がまるで原画のよう
まずパラパラっと絵本をめくると、ページごとにメインとなる色合いがあって、それがパッと目に入ってくるのがすごくきれいですね。めくったときの気持ちよさがすごくある絵本だと思います。
紙は絵本ではめずらしく、五感紙という紙が使われています。一般的に絵本で使われる紙は、さらっとしてたり、光沢紙やマット紙など質感がないものだったりするのですが、この絵本は表紙に使うような紙を中ページにも使っているということにすごく驚きました。絵本っぽくない手法はここにも使われているんですね!
印刷がすごくきれいということもあるのですが、こうした少しテクスチャのある紙であることで、まるで一枚一枚が印刷ではなく原画のように見えるのがすごく面白いと感じました。
絵本って子どもが読むというのが主な使い道のイメージですけど、これはなんとなく大人でもそっと開いて、一枚一枚大事にめくりたくなるような雰囲気があるんですね。それはきっとこの紙の質感もあるんですけど、絵が生々しくて原画に見えるような錯覚がすごくあるんですよ。だから丁寧にめくらないとなんか申し訳ないんじゃないかなって気持ちになる。画集を一枚一枚開いているような感じでめくりたくなります。
15の問いかけ
内容の問いかけなんですけど、まず表紙を見てどんなことを問いかけられるんだろうって思うじゃないですか。
で開いて……、
まず第一に、この「あなたはなぜあなたなのですか?」っていう問いかけがあるんですけど、もうこの時点で子どもはびっくりですよね、答えられない(笑)私が小さいころこれを読んでいたら、「私はなんで私なのか!? え〜!?」みたいにきっとなってただろうなと思います。
もちろん大人でもドキッとするような、そんなこと言われてもちょっと逃げ腰になりたくなるような問いかけですよね。もう答えられないと言っていいと思います。
そんな「いやこんなこと答えられないよ!」って言いたくなるような問いかけがとにかくずっと続くんですね、この絵本は。絵本と言っていいのか難しいくらいなんですけど。
受け手によって読み方が変わる
でも私がこれを最初にパラパラって見て思ったのは、実はこれって、なにも怖いものがない子どもの方が、適当にパって答えられるんじゃないかなということなんです。「ぼくはぼくだからそれ以外のなにものでもないもん」とか「パパとママの子どもだからぼくなんだよ」とかいうように、子どもの方がすんなり答えられる質問なのかもしれません。
きっと大人の方が、なにかこねくりまわしたり、今までの人生経験とかをいっぱいいっぱい頭で考えて言葉に詰まってしまったりするんじゃないでしょうか。
そこの大人と子どもとのギャップを楽しめる作品だと、初めて読んだときに思いました。
当たり前かもしれないんですけど、この問いかけに対する答えっていうのは人それぞれ違うと思うんですね。でも違うことが悪でもないし、みんなが同じだからいいわけでもない。
きっとこの15個の「もんだい」の自分なりの正解を人生の中で見つけられたら、かなり充実した一生だと思います。それぐらい、一生の中で必要な問いかけっていうものが、この15個に詰まっているような気がします。それだけ逆に答えるのが難しいというか、死ぬまでわからないこともあるかもしれない問いかけだと思います。
このすごく魅力的な井筒さんの描く表情と、このたったひとことの問いかけとっていう、一ページがすごくシンプルなんですけど、考える人なら何時間でも考えてしまうような時間も与えられるし、でも子供みたいにただ文字を読んでぱって答えるような年齢だったら本当に一瞬で読み終わるかもしれない。受け手によって与えらる時間がすごく変わる絵本だなとも感じました。
悩ませる絵本
すごくこの一個一個の問いかけが重いというか(笑)
実は私はなにかに悩んだときは、お気に入りの絵本やそのときの気分に合った絵本を読むようにしてるんです。そうすることで悩みを一時的に忘れたり、軽い気持ちになったり。
でもきっとこの絵本に関しては、なにかに悩んだときに読んだらより一層悩むと思います(笑)
でもそれもすごくありかなと。
なにかを考えつくしたり悩み尽くしたり、いざ問題を突きつけられたときにぐっとこらえながらも考え切ったときの快感って、悩みから逃げたときよりもずっとずっと大きいもののはず。だからもしかしてなにかに悩んだ時って、とことんこういうものを読んで問いかけられて悩みつくすっていうのもありなのかなって初めて思いました。私は絵本は癒されるものっていう固定観念があったんですけど、こんなふうに悩ませるような絵本があってもいいんだって。
まあ絵本というより画集や文学作品に当てはまるぐらいすごく重い絵本だと思います。その重さは受け手によってすごく変わると思うので、ぜひぜひこの一枚一枚のページを、書店で見るだけじゃなく手に入れて感じてほしいと思います。
ということで、今回紹介したのは井筒啓之さんの『もんだい』という絵本でした。
なんかすごく悩んだときに読んだらきっともっと落ち込んでしまうかもしれないけど、そういう経験もありかなと思わせてくれる一冊です。
皆さんもぜひ読んでみてくださいね!
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子どもにも大人にも人気! 佐野洋子『100万回生きたねこ』
イラストレーターの五島夕夏さんがおすすめの絵本を紹介するYouTubeチャンネル「五島夕夏の絵本チャンネル」。
今回紹介するのはこちらの絵本です!
言わずと知れたロングセラー絵本ですね!
五島さんは、本にあまり興味のないお友達に子どものころの記憶に残っている絵本を聞くとまず『100万回生きたねこ』があがることが多いと、自身の経験からもこの作品の人気を実感していました。
作者の佐野洋子さんは、この作品のほかにもたくさんの絵本や児童文学、エッセイといった文章もたくさん描いている人です。
小学生から中学生向けの児童文学でも大人が読んでもすごく面白いものがたくさんあるので、ぜひネットで検索して見てみてね!
この『100万回生きたねこ』、
100万年死なない、100万回死んで100万回も生きたねこがあるところにいたという、冒頭から衝撃的な入り口でおはなしがはじまります。
あるときは王様のねこだったり、あるときは泥棒のねこだったりと、100万回の人生を少しずつふりかえっていきます。
そんなねこにはあるときのらねこになった時代がありました。
のらねこの時代、とにかく強くてたくましいこのねこは、メスねこたちからモテモテでしたが、その中に、ツンと一匹だけ見向きもしない白いねこがいました。
ねこはしだいに白いねこに惹かれ、2匹は添い遂げることとなります……。
添い遂げるまでのイラストや文章は、大人が読んでもじーんと心があったかくなったりむず痒くなったりする部分なので、ここはぜひ手にとって見てみてくださいね!
白いねこを愛し、ともに人生をすごし子どもも生まれて一緒に歳をとっていったねこがその後どうなったかという部分が、この絵本のひとつのポイントになっています。
白いねこは100万年生きるねこではないので、やがて年老いて死んでしまいます。
この、ねこが白いねこを抱きしめて大声で泣くシーンのイラストはとてもインパクトがあるんです。
絵本に出てくるねこって、キュートでかわいらしいイメージがありますよね。
この佐野洋子さんが描くねこは、特別リアルタッチではないのですが、妙に本物に忠実なんです。
ねこの口の中は舌にちゃんとテクスチャがあったり、上顎にザラザラした感じが見てとれたり、歯がキバみたいに見えたりと、ド正面から泣いているねこを描こうとしている印象。
その迷いのなさに圧倒されるインパクトがこのページにはあるという五島さん。
安らかでシンプルな線で描かれた白いねこと大声で泣くねこのギャップに誰しも心つかまれるものがあるのではといいます。
佐野洋子さんの文章は、ただかわいいや愛おしいなど、全面に愛を押し出すような表現ではなく、ちょっと小憎たらしかったりかわいそうだったりと、いい意味で悲観したような部分があるところが、読者の心を引きよせる一つの魅力になっています。
別段ファンタジーということはなく、なんてことないこのねこたちがどこかにいるんじゃないかと思わせつつ、現実には100万回生きるわけはないというところで日常ともちょっとちがう……そんなあたまを混乱させるような魅力が、絵にも文章にもつまっています。
絵も文章も同じ人が書いている場合、自分の頭の中の世界を絵にぶつけてそれを補完するように文章があって、文章をぶつけたと思ったら補完するように絵があってというふうに、書き手の中できちんと一つの作品にまとまっているのですごく読みやすいんです。
それが子どもが読んでもとても印象に残るひとつの理由かもしれませんね!
まねできる絵でもまねできる文章でもない、佐野洋子さんだけの一冊。
子どものころに読んだけどなんとなくしかストーリーを覚えていない人は、一字一字かみしめるようにまた読んでみると、ちょっと気持ちが晴れたり違う明日がまっているような気持ちになれたりすると思うので、大人の人にこそもう一度、二度三度と読んでほしい絵本です。
ねこは100万回生きるなかで飼い主たちにとても愛されていて、ねこが死んだときはみんな大泣きしたのですが、ねこ自身は彼らのことを嫌いだったり冷めている部分があったりしました。
そんなねこがのらねこになったときにやっと愛し愛されることを見つけるというところが、このおはなしの確信と思われますが、それが「好き」とか「愛してる」とかいう言葉を使わずに表現されています。
そうした言葉が安く感じてしまうくらい、ほかの言い回しやイラストで表現されている愛情が見てとれるという部分からは、いい意味で子ども向けの作品ではないのではないかと思わされてしまいます。
イラストはたくましいねこが愛くるしく、まわりで遊ぶ子どもたちや言いよってくるメスねこたちにもちょっとずつ違った性格があることがわかる表情や毛並みやタッチがあります。
シンプルな線だったり、ざざざっと筆で描いただけに見える線だったりにも、きちんと意味やなにかの魅力があると思うのでじっと見つめてみてください。
このがばっと大きく開けるサイズもお気に入りポイントだそう。
「日本人の作家さんの絵本もたくさんありますが、とくにこの佐野洋子さんは、ちょっとニッチで 大人にも向けた人は誰って聞かれたら一番にあがる人」と五島さん。
こちらの動画でも詳しく解説していますので、見てみてくださいね!
超ロングセラー絵本『100万回生きたねこ』前編 - YouTube
超ロングセラー絵本『100万回生きたねこ』後編 - YouTube
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