クスッと笑えるゆるーい変身! 鈴木康広『ぼくのにゃんた』
イラストレーターの五島夕夏さんがおすすめの絵本を紹介するYouTubeチャンネル「五島夕夏の絵本チャンネル」。
今回五島さんが紹介するのはこちらの絵本です!
作者さんのトークショーイベントでゲットした絵本
私が本日紹介する本はこちら! 鈴木康広さん作の『ぼくのにゃんた』という絵本です。
この『ぼくのにゃんた』は、鈴木康広さんが出す初の絵本。
それを記念して、先日青山ブックセンターで鈴木康広さんと以前紹介した『このあとどうしちゃおう』の作者のヨシタケシンスケさんとのトークショーがあったんです。
それを観に行った時にこの絵本を購入しました!
トークショーでもらったというサインを嬉しそうに見せる五島さん。「家の猫を描いてもらいました」
実はこの鈴木さん、数年前からTwitterでにゃんたのちょっとしたシリーズみたいなものをちょっとずつアップしていそうなんですね。
ニャイス #猫描き pic.twitter.com/zXY7lYSqrw
— 鈴木康広 Yasuhiro Suzuki (@mabataku) 2013年11月23日
ニャンプー ハッと #猫描き 訂正(ヒゲを忘れていました) pic.twitter.com/cYUUc2vNb6
— 鈴木康広 Yasuhiro Suzuki (@mabataku) 2013年8月25日
インターネッコ #猫描き pic.twitter.com/qOQZxdJg6W
— 鈴木康広 Yasuhiro Suzuki (@mabataku) 2013年8月29日
それらと、新たに描き下したものをまとめたのがこの『ぼくのにゃんた』という一冊になっているそうです。
トークショーでは昔初めて描いたにゃんたが披露されたり、徐々に描き慣れてくる様子も感じられたりして、すごくおもしろかったのを覚えてます。
猫の変化シリーズ
「ねこの にゃんたは ぼくのねこ ちょっと かわった ねこなんだよね」という冒頭からはじまります。
にゃんたはそんな「ちょっと変わった猫」という紹介のとおり、「にゃべ」になったり「まにゃいた」になったり、「バニャニャ」になったり「キャッツカレー」になったり(おそらく「カツカレー」とかけてる!)するんです。
要するに親父ギャグというか(笑)ダジャレみたいに「ねこ」とか「キャット」とかの言葉にかけた猫の変化シリーズがずっと続くんですね。
みなさんも小さいころの記憶を思い出してほしいんですけど、こんなふうになにかが変身したり擬人化したり、動物がなにか違うものに変化したりっていうのがすごく好きだった時期がないですか!?
私が小学生ぐらいのときにこの絵本に出会ってたらすごく「わー! 買って買って!!」ってねだってただろうなって思います。
大人が見てもクスッと笑える
この「にゃん粉」っていう粉を使うと絶対猫の形のおやつができちゃうらしいんですね。
「ニャッフル」とか「ドーニャツ」とか「ビスキャット」とか……。
それって子どもが見たらかわいい、おもしろいって言って笑うと思うんですけど、大人からしたら「いやもうちょっと無理がないですか!」みたいな(笑)
それもおもしろさの一つかと。
大人からしたらちょっと恥ずかしくて、それ猫とかけられてる? みたいになるところも鈴木さんはもうこの素朴な線とイラストタッチで描き切っちゃうんですよね。
それが大人にとっては癒しでシュールで面白くて、子どもにとってはただただかわいくて、変身したという喜びを感じることができる。
そんな大人と子どものどちらにもウケるんだけど、ウケるポイントが違うというところも、この絵本の見どころかと思います。
すてきな発想力
私が一番お気に入りのシーンを紹介します。
この、猫がシャワーになっている「ニャワー」。
もうこの図だけで結構ヤバイなあと思って(笑)
鈴木さんはなんでここに猫をかけようと思ったんだろう……私には浮かばない!
この猫の顔のどこから水が出てるんだろうとか、毛穴から出てるのか? 毛はびしょびしょにならないのか? とかすっごい気になる。
これがもしリアルタッチの猫だったら結構えげつないことになってる気がするんですけど、この絵だから成立しちゃう。
これを絵本の一ページにしようと思う発想は私にはマネできないです!
シンプルなデザインが実はおしゃれ
通常であれば髪の毛も色をつけたり、表情にほっぺたのピンクがあったりしてもいいはずなんですが、にゃんたの肌色と淡いブルーだけでほぼ構成されているんです。
それがまた一周回っておしゃれに感じます。
表紙もすごく素朴でシンプルで、言ってしまえば抜け感ありまくり。
でも実はこれってデスクや本棚に飾ってあったら、デザイン的にとてもおしゃれなんじゃないかと思わせる魅力があるんですよね。
描いていることは親父ギャグだったり子供が笑い転げる内容だったりするんですけど、意外とこの線と色と、中の構成ですごく「今っぽい」絵本になっているいうのもとても印象的でした。
気持ちいいモヤモヤが続く絵本
いろいろとにゃんたが変化しておもしろいシーンが続いた後、ある日主人公の「ぼく」のもとからにゃんたがいなくなってしまうシーンがあるんです。
そのときの悲しいシーンは結構大胆に真っ白な背景を残したまま描いているんですね。
今まで楽しい雰囲気で続いてきたところからいきなりこのシーンに来るので、子どもはきっとはっとするんじゃないかと思います。
それも鈴木さんの天然なのか計算なのかわからないのも、またすごいにくい部分だなぁと感じました。
計算だったら、大人なら「きっとここで泣かせるんでしょ」って思ったり、子どもでも気づく部分があったりするかもしれない。
でもそういうのがなく突然こういう「えっ何この寂しいページ」ってなるページがどんって挟まってたりするので、ちょっとクエスチョンマークが続く絵本なんですよね。
一ページずつ解釈しながら進んでいく絵本ではなくて、毎ページ毎ページではてながずっと浮かび続ける。
それが最後のページまで続いて、なんとなくモヤモヤしてるんですけど、その気持ちいいモヤモヤがページを閉じても続くっていうのがこの絵本ならではの魅力だと思います。
そういうページを閉じてもなんとなくおしまいにしないでほしいと思わせる絵本ってなかなかない気がします。
おそらくそれを鈴木さんが狙ってなく叶えているというのが、この絵本をたまに見返したくなる理由かなと思います。
絵本刊行イベントへの参加をおすすめする理由
私はいつも絵本を紹介させてもらっていて、購入してみてほしいとか読んでみてほしいとお伝えしているんですが、私が今回おじゃましたトークショーみたいなものに行ってみるのもおすすめです。
実は意外と絵本って、出版するときにそういったイベントが本屋さんなどいろいろなところで行われていたりします。
そういう場で一度作者の方の話を聞いてから絵本を購入してみると、作品への興味や解釈がガラッと変わりますよ!
作品を通して作者の方と接するだけではなく、ダイレクトに作者の方の話を聞いてみる機会を持つというのも、絵本との新しい向き合い方なのかなと思います。
『ぼくのにゃんた』のトークショーにもお子様連れの方がいたのですが、大人向けの難しい話をしている中でも、子どもたちはすごく真剣に聞いている印象がありました。
意外と子ども大人関係なく、作者の方の話は面白く感じられる性質を持っていると感じたので、絵本好きの人以外にも勧められる場かもしれません。
ぜひそういうイベントがあったらみなさんも参加してみてはいかがでしょうか!
ということで本日私が紹介したのは鈴木康博さん作の『ぼくのにゃんた』という絵本でした。
よろしかったらみなさんも読んでみてください!
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クスッと笑えるゆるーい変身! 鈴木康広『ぼくのにゃんた』前編 - YouTube
クスッと笑えるゆるーい変身! 鈴木康広『ぼくのにゃんた』後編 - YouTube