圧倒的にシンプルで圧倒的に美しい! 夜明けとともに読みたい絵本『よあけ』

イラストレーターの五島夕夏さんがおすすめの絵本を紹介するYouTubeチャンネル「五島夕夏の絵本チャンネル」。

  

今回ご紹介するのはこちらの絵本です! 

よあけ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

ユリー・シュルヴィッツ『よあけ』。

絵の美しさやおすすめの読み方について語っていました。

 

▼動画はコチラ

夜明けとともに読みたいシンプルで美しい絵本『よあけ』前編 - YouTube

夜明けとともに読みたいシンプルで美しい絵本『よあけ』後編 - YouTube

 

 

 

書き起こし/岩間よいこ

 

 

 

静かな絵本

 

 

今日紹介するのはこちらの『よあけ』という絵本です。

ユリー・シュルヴィッツさん作・画で、日本人の瀬田 貞二さんが訳をしています。

この絵本、ひとことで言うならば、「圧倒的にシンプルで圧倒的に美しい絵本」。

そんなふうに私は思いました。

 

簡単にストーリーを説明します。

ストーリーと言っても、文字数はかなり少なくて、静かにゆっくりと進んでいく内容になっています。

 

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音のない暗い暗い夜のシーンから始まって、その静まり返った夜の湖のほとりでおじいさんと孫が2人で寝ています。

そこでは月が木や湖や山、おじいさんたち2人をパーっと照らしていて、本当に静かな夜の世界が数ページ続きます。

その後に、少しずつ少しずつ月が沈んでいって、だんだん周りが明るくなりだした頃に2人が起きだして、何やら準備をして湖にボートで漕ぎ出すんですね。

 

その時にパーっと昇ってきた太陽と、見えた景色が前面に描かれてるっていうのが、この絵本のメインのページともいえます。

とにかく言葉はもちろんなんですけど、絵で魅せるすごく静かな絵本です。

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主人公は一応おじいさんと孫という2人がいるんですけど、それはあくまでもストーリーを進める中での登場人物でしかない。

周りの自然とか、当たり前の一日の始まりとか、人間に特化したものではない大きな枠で捉えている印象です。

 

 

光の美しさ 

 

最初に読んだとき、絵を描く身としても、ただ絵本を読む身としてもすごく感動したのが、光の使い方。

 

まず冒頭で、白い余白をたっぷり残した小さな円の中に静かな夜が描かれていて、

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それが次のページでぼうっと月に照らされるんですけど、この時点でもう光がとってもきれい。

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月っていうのは、写真で撮っても目で見てもすごく美しいものだと思います。

それに対して、絵の具で白いキャンバスに描くことによってしか表現できない月、絵じゃなきゃ出せない光の美しさを、このページを開いたときにすごく感じました。 

 

紙の絵本を開いたときの感動 

 

最初は青みがかった、グレイッシュで白と青と月あかりの光だけで表現されたページが続いていきます。

そこから徐々に日が昇っていく淡い時間が描かれてくんですが、そこでちょっとずつ緑とか火の炎の赤みとかが出てくる。

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そして最後に、びっくりするほど鮮やかな色がバーっと出てくるんですね。

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これはもうカメラを通したりネットで見たりしても伝わらない、絵本のページ開いたときにしか、その本人にしか分からない強い感動があると思います。


どの絵本も、デジタルで見るのはすごく便利だとは思います。

でも紙で開いたときの感動というのはどの絵本にも絶対にあって、この絵本はとにかくそのときのインパクトが強いと、最初見たときにすごく感じました。

 

最後のページは本当に私ははーっとため息が出るほど感動したんですけど、これもフィルターを通すとまたちょっと違う見え方になってしまうと思うので、ぜひ紙で開いて見てほしいと強く思います。

 

 

ただ一気に読むわけじゃない 

 

 

絵本って、簡単に例えば2、3分あれば読めてしまうっていうのもすごくいいところではあります。

この絵本に関してはバーっと読もうと思えば本当に1分かからずに読めてしまうんですけど、

落ち着いて椅子に座って、温かい飲み物を入れて、本当に自分も夜明けを待つような気持ちでちょっとずつ読み進めてもらいたいです。

 

この絵本、普通の絵本とちょっと違って変わっている部分があります。

全面にイラストがあるわけではなくて、ぼやーっと縁が描かれていて、それが大きくなったり小さくなったりしながら、真っ白の部分が埋められていないページが続いていくんです。

 

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よく見るとその縁にちょっとにじんだテクスチャーや、ちょっとのぞいた淡いピンク色など細かな表現があるのが分かります。

何回も読めば読むほど発見があって、シンプルなものだからといって一度で満足とは思わせない魅力が詰まっています。

 

私がこの絵本をどこかで読んでいいよって渡されたとしたら、自分が夜明けを迎えたい場所に持って行って、夜明けと一緒にページをめくって読みたくなるくらい、

絵じゃなきゃ表現できない美しさと、目で見る現実世界の美しさを見くらべてみたいと思わされます。

 

そんなところが面白い部分であり、ただ絵本をペラペラめくって読むという体験の域を超えてるんだなと思います。

 

 

紙の絵本であるからこその魅力

 

もちろん登場人物の動きとかも魅力的でじんわり温かい気持ちになる部分はあるんですけど、やっぱり人間のそうした特徴を忘れてしまうぐらい圧倒的な自然の強さを感じます。


そんな壮大さを、この特別大きすぎるわけじゃない紙の中で感じさせてくれるっていうのは絵本の魅力ですよね。

3Dじゃないのに紙から飛び出してくるように感じられるっていうのは、本当にあえて紙であるからこその特徴だと思います。

 

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今は立体的なものやすごく高画質な物に囲まれて私自身も生活してるし、それが当たり前の世の中になっています。

でも紙の上に色をのせるだけでも人は立体的なものを想像するし、その場所に行ったような気持ちになれる。それを強く証明してくれる絵本だと思います。


私自身はこの絵本を最近知ったんですけど、日本での発行が1977年なので割りと古い作品といえます。

古さを感じさせないことはもちろんなんですけど、描かれた時代と、ものが発達して電子機器がたくさんあるような世界になった今の時代とで変わらない感動を与えてくれる。

そうした普遍的な魅力が存在するのが絵本の良さだなって強く実感しました。

 

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もちろん子どもでも理解することができるし感動もする絵本だと思うんですけど、やっぱり大人が静かに静かに夜明けと一緒に読んでほしいような一冊です!

 

よあけ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

よあけ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

 

 

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