何度読んでも泣いてしまう絵本!『くまとやまねこ』

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今回ご紹介するのはこちらの絵本です!

くまとやまねこ

湯本香樹実 ぶん,酒井駒子 え『くまとやまねこ』。

 

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何度読んでも泣いてしまう絵本!『くまとやまねこ』前編 - YouTube

何度読んでも泣いてしまう絵本!『くまとやまねこ』後編 - YouTube

 

書き起こし/岩間よいこ

 

 

何度読んでも泣いてしまう

 

今日紹介するのは湯本香樹実さんがぶん、酒井駒子さんがえの『くまとやまねこ』という絵本です。

くまとやまねこ

くまとやまねこ

 

 

私はこの絵本を、 本屋さんで立ち読みしたときにまず泣いて、家に帰って読んでまた泣いて、お母さんに勧めて読ませたらお母さんが泣いて、それを見て泣くっていう。

本当に何度読んでも泣いてしまう絵本です。

 

毎回「来る来る来るここで来る!」って分かりつつ絶対に泣いてしまう、ある種泣きたいときに読むというお薬のような絵本です。

 

 

親友を亡くしてしまったくまの心の再生

 

くまとやまねこ

『くまとやまねこ』というタイトルではあるんですが、まず最初に登場するのは、表紙にも描かれているくまとこの肩に乗っている小さなことりなんですね。

 

こんなグレイッシュなテクスチャのある紙の上に、黒いパステルとか木炭で描いたたようなモノクロのイラストがずっと続いていきます。

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1ページ目でまず主人公のくまが泣いています。

仲よしのことりが死んでしまいましたというところから始まるんです。

さすがにまだここでは泣かなかったんですけど!

 

くまは大親友のことりが亡くなったことをとても悲しんで、自分で小さな小箱を作ってその中にお花とことりを詰めてシクシク泣いているんですね。

 

くまは悲しくて悲しくて仕方がないから、その小箱をいつも持ち歩くわけですよ。

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それで外に持ち歩いているとまわりの友達たちにその小箱なにって言われるので、中に入っている亡くなったことりを見せたりするんですね。

そうすると周りの動物たちはそれを見て困ってしまう。

 

気味悪がることはないんですけど……死んでしまってるんだから持ち歩いたって仕方がないんだよとまわりの友達は励ますんです。

 

でもくまにとっては大事なことりなので聞く耳を持たないんですね。

くまは徐々に引きこもるようになってしまいます。

 

そんな中、ある日やっと天気がいい日に外に出たときに一匹のやまねこと出会います。

そのやまねことのおしゃべりや、音楽家のやまねこの演奏を聴くことを通して、くまの心境が徐々にに変わっていくというのがこの絵本の主軸になっています。

 

 

モノクロの絵本の特徴

 

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全体的にモノクロで色味が全くなく、文章も割と長いので、下手すると飽きてしまうんじゃないかって一瞬思われるかもしれません。

でも私は本屋さんで立ちながらでもバーっと読み進めてしまうくらい引き込まれるものがありました。

 

モノクロの絵本というのはこの一冊だけではないと思うんですけど、何よりの特徴は、読む人に色を想像させるという点です。

ことりを亡くして悲しいというくまの気持ちもモノクロですごく表現できるし、ことりと一緒に木箱に詰めた花は何色なんだろうって読む人に自然と思わせることができる。

 

そんなところがモノクロであるがゆえのメリットだと(泣いているときではなく)冷静になったときに思いました。

 

 

絶対に泣いてしまうシーン

 

先ほど紹介したように、やまねこに出会ってくまの心境はちょっとずつ変わっていきます。

というのも、やまねこはことりを亡くしてしまったくまに対して唯一、ほかの友達とは違う反応をしてくれるんです。

本当に大事だったんだねというふうに言ってくれるんですね。

 

そしてやまねこはくまとことりのためにバイオリンで一曲演奏してくれます。

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そのシーンは言葉がなく、もちろん絵本だから音楽は流れないんですけど、それも頭の中でモノクロの色を補完するのと一緒で、弾いているやまねこの姿を見てどんな音楽なんだろうってこっちが勝手に想像してしまうんですね。

そんなところもこの絵本の素晴らしい特徴だと思います。

 

くまはじっと座ってその音楽を聴きながら、ことりとの生活を回想するんですけど、私はもうこのへんで泣けてきてしまいました!

  

ことりは亡くなった存在としてここまでずっと続いてたのに、くまの回想によって生きていた頃の生き生きとした姿が出てくるんですよ!

そこでもう悲しくなってしまうというか、あまりにも愛くるしくて、生きることを一生懸命楽しんでいることりの姿を見ると絶対にこれは泣いてしまうと!

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子どもの方が死だったり生きているときの回想だったりをちゃんと受け入れられるのかもしれないんですけど、大人になった今は完全にぐっとくるものがある。

 

それは小さな動物だからとかくまがかわいそうだからとかじゃなく、理屈ではない生きているものの愛くるしさと死んでしまうことの儚さを圧倒的に感じてしまうんですよ。

ことりだからという次元ではなく、尊いものと儚いもののギャップに気持ちがぐっと持っていかれてしまう。

 

それがこの絵本のねらいでもあるのかもしれないけど、私はそれを強く感じました。

 

 

差し色の効果

 

ここまでずっとモノクロで続いていたのに、ことりが出てくる回想シーンで差し色みたいにピンクがちらっと入ってきます。

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それがデザイン的にはすごくおしゃれとも取れるし、生きていた頃の生き生きとした感じとか、くまの回想の中で思い出された色味とかっていうのを感じさせてくれるんですね。

だからここまでモノクロが続いてきたことの意味がここでいきなりすごく生きてくる。

 

この差し色のピンクが、もしかしたらたくさんの色があるカラフルなものよりもカラフルに見えるという錯覚を起こさせます。

またこの一色が入ることによって、生きてるものの美しさをより感じさせてくれる。

 

……っていうのを泣いているときは感じないけど、読み終わったときに再度思い返すとあるなって思います!

 

でもこうやって解説しようと思うとこういうお話になるんですけど、やっぱり涙を流すときって理屈じゃない部分が絶対にある。

私は何度読んでも泣くってことは、きっと何度読んでもわからない泣いてしまう理由があるんだと思います。

それは泣かなくなったときにやっと理解できるじゃないでしょうか。

  

 

心にぐっとくるものは絵本にも存在する

 

私の母はもう割と……年齢を言うときっと怒られるんですけど(笑)、50代そこそこぐらいの母親がこれを読んで、私と同じタイミングで同じように泣くんですね。

 

母は陶芸家の五島美菜子。2017年3月24日~4月2日東京目黒のMaruse B1 galleryにて親子展を開催。

 

それはもしかしたら親子だからかもしれないし、同じ女性だからかもしれないし、同じように動物が好きだからかもしれないし、理由はたくさんあるかもしれません。

そういう年齢関係なく何かぐっときててしまうものがあるということには、自分たちにはわからない何か理屈があるんだと思います。

 

そうしたものはもしかしたら普通の小説や映画などでも感じることができると皆さん思っていると思います。

でも実は絵本でも同じような体験ができるってことを知ってほしいと、この絵本を読んだときに強く思いました。

 

子ども向けとか幼児に読み聞かせてあげるものとかっていうイメージだけじゃなくて、数分の中でいきなり心をつかまれる時間が絵本にもきちんと存在するっていうのを、絵本を読まない人には特に知ってほしいです!

 

 

お子さんと感想を共有してみて

 

結構文章も長くて割と文学作品みたいな感じでもあるんですけど、もちろん絶対に子どもでも理解できるし、それが絵本のいいところでもあります。

 

ぜひお子さんがいる方はまず自分が読んでみて、どこがどういうふうに感じたかって感想を持った上でお子さんに読ませてあげてください。

その感想を共有しあったり、何が悲しかったとか何が美しかったとかっていう話をしてみたりするいい機会になるかと思います!

 

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「また泣きたい気分になったらきっと読んじゃうと思います」

 

ということで今回紹介したのは、湯本香樹実さんがぶん、酒井駒子さんがえの『くまとやまねこ』という絵本でした。

くまとやまねこ

くまとやまねこ

 

 

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